人生1度目のサターン・リターンを改めて考える
生まれたときの土星の位置にトランジットの土星が戻ってくるのがサターン・リターンです。
土星はおよそ2年半でひとつの星座を運行していくので、約30年で生まれたときの場所に戻ってきます。
つまり、30歳のころ、1度目のサターン・リターンを、そして60歳のころ、2度目のサターン・リターンを迎えるのです。
ここでは、フランク・クリフォード先生の1度目のサターン・リターンに関する考察をご紹介しますね。
【目次】
- まえがき
- 1. 大人と権威への入り口
- 2. 評価、危機、変容
- 3. 現実と真理
- 4. 偽りの自分のそぎ落とし
- 5. 報酬と新たなポテンシャル
- サターン・リターン後の人生: 32歳で迎えるシャドウ・サターン・リターン
幼少期から思春期、青年期に至るまで、支離滅裂で猛烈な戦闘に明け暮れていたエネルギーが、人生29年目を迎える頃、隊列を整え始めるというのはよくあることだ。混乱と当惑だらけだった人生が、まっすぐで狭い成熟の門で、形と目的をもち始めると、わたしたちは、大きくおぼろげだった可能性を手放し、小さく厳しい現実を受け入れる。そして(30歳にして)自分に適していると感じられ、喜んで苦労を引き受けようと思える仕事を、ついに見つけるのだ。
―― ガートルード・スタイン、小説『Fernhurst(ファーンハースト)』p.29~30
まえがき
サターン・リターンという現象を知っていたかどうかに関係なく、人生初のサターン・リターンの時期を振り返ってみたとき、大半の人は、30歳を迎えるまでの1年間が特別な時期だったと認めるでしょう。
サターン・リターンがどのようなものになるかは、20代の過ごし方と大きく関係しています。
人によっては、成功期と重なったかもしれません。
それまでの努力が具体的な成果となって現われ、人から認められたりしたでしょう。
あるいは、自由奔放だった自分に別れを告げ、身を固めた時期だったかもしれません。
職場や家庭で(パートナーとして、あるいは親として)大人にふさわしい責任ある役割を引き受けたことでしょう。
そして、たいていの人は、うまく行かないことは何でも親のせいにしたり、いつも助けてもらえると期待したりする生き方をそろそろやめにしなければならない頃だったでしょう!
他人の価値観を軸に生きてきたとすれば、29歳で迎えるサターン・リターンは危機の時期だったはずです。
自分自身のニーズと進化に対する意識が、周囲の人びとの期待に応えようという意識と真っ向からぶつかったからです。
たいていのトランジットには、影響の持続期間があります。
オーブを1度にとると、天王星がわたしたちのチャートの感受点を刺激する期間はおよそ18カ月間、海王星と冥王星は2年にも及びます。
サターン・リターンは、通常の土星のトランジット(9カ月間に3回も行き来する)よりもはるかに重要に感じられるでしょう。
占星家の多くは、サターン・リターンが27歳で始まり、29歳で最高潮を迎えると感じています。
そのとき、わたしたちは、誕生以来、形づくられ、構築され、確立されたもののすべてを見直すチャンスを手にします。見直しの対象になるのは、たとえば、次のようなことです。
- 権威、規律、境界、制約、限界に対する自分の姿勢
- 求めるもののために、どれだけ努力できるか
- 自分の性格や「中身」の基準
- 責任、社会的ルール、社会から期待されることを、どう引き受けるか
西欧社会においては、サターン・リターンは、思春期の延長(人間に特有のもの)の終わり、見習い期間の終わりの始まりを意味します。
ネイタルの太陽と土星の位置とアスペクトに象徴される、人生で学ぶべき大きなレッスン(リズ・グリーンが「チャートの背骨」と称するもの)に、真剣に目を向け始める時期がサターン・リターンです。
それはまた、土星にふさわしく、こんなことを思い知らされる時期かもしれません。支払った分に見合うだけのものが得られないとしても、支払わないうちは、何も手に入らないのだ、と。
人生初回のサターン・リターンについて、多くの占星家が著作の中でさまざまに言及しています。
ここでは、彼らの考察を5つのテーマに分けて、紹介したいと思います。
1.大人と権威への入り口
スティーヴン・フォレスト
わたしたちは、人生の「ヴィジョン」を追いかけながら、個人のアイデンティティを確立する途上にある。この時期には、自分のパーソナリティと運命に対する洞察が道しるべになる。それらの道しるべの目的は、最終的にわたしたちを成熟へと導くことにあるのだ。
『The Changing Sky(変わりゆく空)』(ACS, 1998)p.100
シュレーヌ・ショスタク、ステファニー・アイリス・ワイス
大人になるための崖っぷちに立っているわたしたち。子ども時代は完全に終わった。もう戻ってはこない。今この瞬間、選択権は自分の手の中にある。正しい決断を下し、ハートの声に従って生きるなら、ここからの29年半は、より豊かで、幸せで、順調なものになるだろう。
『Surviving Saturn’s Return(サターン・リターンを生き抜く)』(Contemporary Books, 2004) p.6
ノエル・ティル
サターン・リターンに先立つ1年、または1年半の間に、フライングや間違いを繰り返したすえに、アイデンティティはようやく自力で成長を遂げる。人生が方向やレベルを意識的に変えるのだ。その変化のためには、アイデンティティ全体、ホロスコープ全体のフル活用が求められる。
『The Principles and Practice of Astrology, Volume VII: Integrated Transits(占星術の理論と実践、第7巻: トランジットの統合)』(Llewellyn, 1974) p.34
アレクサンダー・ルパーティ
サターン・リターンは、往々にして、人生の方向性、価値を置く友人のタイプ、そして、従事する職業やビジネス活動のタイプを決める1年になる。その人は、原則に沿って行動し、社会における明確な機能や役割をできるだけ盛大に果たさなければならない。
『Cycles of Becoming(人生のサイクル)』(CRCS, 1978)p.139
エリン・サリヴァン
これまでに携わってきたこととは違う、新たな選択肢を探ろうという気持ちが高まってくる。当初、それは本能的で子どもじみた未熟な衝動にすぎない。サターン・リターンの最初の1年は、自分がほんとうに成長したいのか、したくないのか分からず、矛盾に満ちている。だが、(サターン・リターンが過ぎると)親を恨んだり、責めたりすることが減っていく。自分の人生とその方向性に対する責任を引き受け、親の欠点を赦すようになるのだ。
『Saturn in Transit(トランジットの土星)』(Arkana, 2001) p.185
リンダ・レイド
権威と成熟を手に入れたいという内なる衝動を感じながら、その一方で、そんなものは罠かもしれないという意識が芽生え始める時期。
『Astrology Step by Step(占星術ステップ・バイ・ステップ)』(Canopus, 2001) p.185
ウェンデル・C・ペリー
成長の必要性を痛感する時期であり、大人にふさわしい仕事や役割を引き受け、自分という人間をかたちづくる限界や問題と向き合うことが求められる。ハードワーク、困難な選択、運命的な決断などが、この時期の一般的な特徴。チャンスは、つねに重い責任と広範な影響力を伴う。ここで踏み間違えると、その後の人生に重大な影響が及ぶだろう。
『Saturn Cycle(土星のサイクル)』(Llewellyn, 2009) p.284
2.評価、危機、変容
ローズ・エリオット
生まれてこの方、30年間かけてせっせとつくり上げてきた人生の枠組みが、心地よさを失い、束縛のように感じ始める。なぜか、自分らしい生き方ではないように感じられる。
『Life Cycle(人生のサイクル)』(Polair, 2008) p.74
ロバート・ハンド
自分にふさわしくない活動を人生の軸にしてきた人は、この時期に危機を迎える。
『Planets in Transit(惑星のトランジット)』(Whitford Press, 1976) p.348
ニコラス・キャンピオン
これまでに達成してきたものに対して、深い不満が生まれやすく、それゆえに、危機的な状況にも陥りやすい時期だ。若くして不適切な結婚をした人が別れたり、責任を負うことを嫌ってきた人が突然、身を固めたりする。その結果、通常は、大いなる安定感と成熟がもたらされる。
『The Ultimate Astrologer(究極の占星家)』(Rider, 2002)p.133
ジェイミー・バインダー
現実を見据えて、しっかりと土台を築いてきた人は、サターン・リターンの時期、キャリアを強固なものにしたり、心機一転、刺激的な道へ進んだりする。一方、絵空事に終始してきた人は、たいていの場合、問題に直面する。
『Planets in Work: A Complete Guide to Vocational Astrology(天体の作用:職業占星術完全ガイド)』(ACS, 1988) p.24
シュレーヌ・ショスタク、ステファニー・アイリス・ワイス
土星が描くヴィジョンは、わたしたちにとって偉大な父親のようなもの。その点で土星はわたしたちの味方にほかならない。土星はわたしたちに、ポテンシャルを発揮し、夢を実現すること、誰にも頼らず、自分自身に正直であることを求めている。この宇宙の父が我慢強くせっせと繰り出してくる課題に取り組まずにいると、それは外的な事象となって、わたしたちの前に姿を現す。
『Surviving Saturn’s Return(サターン・リターンを生き抜く)』(Contemporary Books, 2004) p.12
マーティン・フリーマン
ネイタル土星の意味に関連したテストのようなものが行われる。そのテストは人間関係や出来事を通じてやってくるかもしれない。暗い心的状態に陥るか、自分と向き合って努力するか。どちらに転ぶかは、ひとえに、内なる緊張状態をコントロールしつつ、それを成長や変容につなげられるかどうかにかかっている。そうでなければ、自分が経験していることを外在化させたいというニーズが働き、問題を他人のせいにして、自分には責任がないと考えるようになる。
『Forecasting by Astrology(占星術による未来予測)』(Faculty of Astrological Studies, 1982) p.27
スティーヴン・アロヨ
人が自身の「基本的性質」をどれだけ表現してきたか、抑圧してきたかは、そこへ至るまでの29年間の生き方にかかっている。人生初のサターン・リターンは、おもに過去の条件付け、カルマ、両親の影響、社会的圧力に対する「反応」によって決まるのだ。
『Astrology, Karma and Transformation(占星術、カルマ、変容)』(CRCS, 1978) p.82~83
3.現実と真理
バーナデット・ブレイディ
サターン・リターンとは「リアルになること」を意味する。ほんとうに末永く幸せに暮らすためには、人生の手綱を握り、より現実的なやり方で人生を築いていかなければならない。結婚、子ども、キャリアといったものが何の苦もなく手に入るかのような、幼少期からの非現実的な夢物語が、現実という冷徹な光のもとで崩れ去るのがこの時期だ。
『Predictive Astrology: The Eagle and the Lark(未来予測の占星術:ワシとヒバリ)』(Weiser, 1999 edition) p.20
アダム・スミス
あらゆるたぐいの夢が現実という壁にぶち当たり、実践的かつ実行可能な選択肢だけが生き残る。もちろん、土星は因習そのものだ。したがって、サターン・リターンは、わたしたち自身の根本的な真理と、周囲からのプレッシャーや期待との間でうまく折り合いをつけていくような性質を帯びている。
『Saturn: Fatal Attraction(土星:宿命的な魅力)』(O Books, 2007) p.71~74
スティーヴン・フォレスト
夢は現実と取引しなければならない。現実相手の交渉は一筋縄ではいかないだろう。だが、今は手を打つべきときだ。野心満々だった、あの「ロックスター」でさえ、音楽教師の道を選んだりする。だが、たとえ妥協はしても、彼の若々しいヴィジョンの本質はなおも生き続けるのだ。
『The Changing Sky(変わりゆく空)』(ACS, 1998) p.101
ジェイミー・バインダー
変革と現実的な方向転換のチャンスは、危険な障害を装ってやってきては、キャリア・パスの見直しを余儀なくさせる。そのとき無意識のまま逃げることを選ぶのは、人生を相手に子どもじみたドッジボールをするようなものだ。
『Planets in Work: A Complete Guide to Vocational Astrology(天体の作用:職業占星術完全ガイド)』(ACS, 1988) p.24
ロイス・ロッデン
自分の本質と向き合ってきたことの報いがめぐってくる。ものごとが達成され、結果が出るか、苦い教訓となって残るか。根気強く、規律正しく、着実な努力を続けるなら、やがて古い義務を清算し、未来に向けて長期的目標を定められるだろう。
『Modern Transits(現代トランジット考)』(AFA, 1978) p.88
ジェームズ・R・ルイス
サターン・リターンでは、人生を真摯に見つめ直すことに意識が集中する。自分らしくあろうと精一杯努力し、成長してきた人は、長年のハードワークが報われる時期だ。一方、強風に流されるまま、砂のうえに人生の土台を築いてきた人は、この時期、足をすくわれやすい。
『The Astrology Encyclopedia(占星術事典)』(Visible Ink Press, 1994) p.455
グラント・ルイ
人生において最も重要な時期。何の制約も受けず、この先二度とないくらい状況に左右されずに自由意志が働く時期だ。だが、その特権に伴う義務も引き受けなければならない。今こそ手を伸ばせ。人生と自分自身を手に入れよ。きわめて現実的な意味で、あなたの自由意志がこの先の長い人生の運命を決めるのだから。
『Astrology for the Millions(万人のための占星術)』(Llewellyn, 1990 edition) p.337
4.偽りの自分のそぎ落とし
グラント・ルイ
サターン・リターンは内省と自己分析の最も重要な時期だ。自然に自分を見つめ直すことになる場合もあれば、外的な状況によってそうならざるを得ない場合もあるだろう。あなたは今、過去を振り返り、自分がめざしてきたものを調べ直している。ものごとに対する見方を深く再考している最中だ。だが、このトランジットが過ぎれば、あなたはかつての内的制約の多くから解放される。不要なものをそぎ落とした後は、あなたの本質が残るだろう。
『Astrology for the Millions(万人のための占星術)』(Llewellyn, 1990 edition) p.337
ロバート・ハンド
意識的かどうかは別として、あなたは今、自分という人間の本質とは関係ないものをすべて人生からそぎ落としている。
『Planets in Transit(惑星のトランジット)』(Whitford Press, 1976) p.348
リズ・グリーン
自分は無能だという気持ち、過剰補償の心理、両親からの縛り、過去から引きずってきた価値観、そういうものと向き合い、自己を解放することが可能になる。そこには、崩壊と幻滅がある一方で、パーソナリティの中の偽りの部分や一方的なもの、非現実的なものとの和解がある。つまるところ、古い仮面を脱ぎ捨て、ほんとうの――たいていは「完璧」ではない――自分を発見する、死と再生のプロセスなのだ。
『Relating(占星学)』(Samuel Weiser, 1977) p.241~244
イヴ・ジャクソン
自分が選択した道と、ほんとうの自分のニーズや能力との乖離が、逃れられない現実となって迫ってくる。30歳は人生の一里塚。それを過ぎれば、もう、世間から「若気の至り」とは見てもらえない。中年期の入り口に立った今、本気で大人になるのだ。
『Astrology: A Psychological Approach(占星術:心理的アプローチ)』(Dryad, 1987) p.112
5.報酬と新たなポテンシャル
スティーヴン・アロヨ
最初のサターン・リターンでは、古い借金がチャラにされ、さまざまなカルマ的なパターンや義務から解放されたように感じることが多い。人生の骨組みにはどうにも変えようのない「制約」があることを感じる。それと同時に、「自由」を得たような感覚、場合によっては、うきうきとした喜びさえも伴う。この無限の内なる自由の感覚は、自分のほんとうのニーズ、能力、創造的ポテンシャルをより明確に理解してこそ、もたらされるものだ。
『Astrology, Karma and Transformation(占星術、カルマ、変容)』(CRCS, 1978) p.83
アダム・スミス
サターン・リターンは、ものごとの達成に具体的な物差しを当て、うわべの成功ばかりで満足しないようにバランスをとる。自分の得意なもので成功することは、それ自体が報酬だ。この時期、選択は有限なものとなり、取り消し不能にさえ見えてくる。自分の下す決断が人生を決定づけ、重大な結果を招きうること、それが30歳を過ぎてからとそれ以前の人生の最大の違いでもある。
『Saturn: Fatal Attraction(土星:宿命的な魅力)』(O Books, 2007) p.71~74
リン・バーベック
土星は、あなたが自分のポテンシャルを発揮し、責任を果たしているかどうかをチェックしにやってくる。生き方次第では、テストが課されたり、その調子で頑張れと励まされたり、見直しを促されたりする。夢を実現しようと何度か頑張ったものの、土星の影響下でさえ、成功できない場合がある。そのときは、自分の夢がそれまでのものだったと気づくか、あるいは、この努力がいずれ役に立つ日がくるはず、と思えばいい。
『Do It Yourself Life Plan Astrology(人生のDIY占星術)』(Element, 2000) p.115
バジル・フィアリントン
深く、意識的かつ重要な変化を伴う時期。ほとんどの場合、自分を取り巻く状況に対して見方ががらりと変わる。その人は、(リーターンが終わる頃)より深い目的意識をもって新たな人生を生きるようになる。こうした変化は、人間関係の劇的なシフトを意味することも多い。人として著しく成長する最も重要な時期に当たる。
『The New Way to Learn Astrology(新たな占星術学習法)』(Llewellyn, 1999) p.205
スティーヴン・フォレスト
サターン・リターンをうまく乗り越えた人は、この世に生まれたことの使命や感動をいつまでももち続ける。なぜなら、大人としてのアイデンティティを確立した後でさえ、若々しいヴィジョンは、修正と多少の妥協を除けば、いまだ健在だからだ。サターン・リターンの克服に失敗することの恐ろしさは、むしろ「成熟」と「現実性」という名のベールに隠されがちなこと自体にある。やがて迎える中年期。若かりし頃への懐古と冷笑の入り混じった不思議な意識が芽生えると、人は、人生の危機を前に壮大な虚しさを覚えるだろう。
『The Changing Sky(変わりゆく空)』(ACS, 1998)p.102
サターン・リターン後の人生: 32歳で迎えるシャドウ・サターン・リターン
コンサルテーションを実践する占星家のもとには、目下、サターン・リターン中という人からの相談が頻繁に舞い込みます。
わたしもそういうクライアントを数多く見てきました。
ところが、この仕事を続けているうちに、少々、当惑させられるケースに出会うようになりました。
サターン・リターンから3年後、32歳になったクライアントが再びやってきて、28~29歳のときと似たような状況やテーマに直面していると訴えるのです。
そこで、なるほどと思いました。サターン・リターンがほんとうの意味で終わるのは2~3年後なのです。
わたしが「シャドウ・サターン・リターン」と名づけた、この現象は、トランジットの土星がソーラーアークの土星の位置に追いつく時期、つまりネイタル土星から31~32度進んだ位置を通過する時期を指します。
29歳のサターン・リターン以降、トランジット土星がソーラーアーク土星に追いつくまでには、さらに2.5年ほど要します。そして、追いつく場所はサターン・リターンとは別のサインであり、しばしば別のハウスになります(注1)。
32歳のシャドウ・サターン・リターンでは、もともとの29歳時点のサターン・リターンのテーマ、出来事、心的状況が繰り返されます。
占星家であるわたしたちの役割は、2つのリターンが関連していることを指摘し、何が再燃しているかをクライアントに気づかせることです。
シャドウ・サターン・リターンは、29歳時点でやり終えなかった課題を処理する/再挑戦するチャンス、あるいは、過去から引きずってきたパターンに気づくチャンスです。
必要であれば、29歳のときとは別の選択をとることもできます。
わたしのクライアントのファイルには、2つの時期のつながりを示す興味深い実例が、たくさん収められています。
時を経て、同じ人物と再会したり、似たような状況に置かれたりして、クライアントは、自分のホロスコープが示す領域と向き合わざるを得なくなるのです。
クライアントが迎えているシャドウ・サターン・リターンの性質を分析する際、わたしは、もとのサターン・リターンの時期を示しながら、「その時期に何かありませんでしたか?」と確かめます。
すると、たいていのクライアントは、現在の状況と直接つながりのある出来事を思い出します。
過去を振り返ることによって、現在との間の有意義なつながりが見えてくると、それを参考に、クライアントは目下の重要な局面にふさわしい決断を下せるようになるのです。
注1: 人生2度目のサターン・リターンは59歳頃、2度目のシャドウ・サターン・リターンはそのおよそ6年後に訪れます。こうしたシャドウ・トランジットはどの天体でも起きるものです。
マーガレット・サッチャーが2度目のサターン・リターンを迎えた1984年(ネイタル土星は蠍座でASCとコンジャンクション)、「サッチャリズム」を終焉に向かわせる2つの出来事が起きました。
炭鉱労働者の大規模ストライキとIRAによる爆弾テロです。その6年後のシャドウ・サターン・リターンのとき、サッチャーは首相を辞任しています。
マイケル・ジャクソンが児童への性的虐待の嫌疑をかけられたのは、1993年8月、蠍座のトランジット冥王星がネイタル火星の上を通過中のことでした。
やがて2019年の初め、冥王星がついにソーラーアーク火星に対してオポジションの位置までくると、ドキュメンタリー映画『ネバーランドにさよならを』がリリースされ、さらなる疑惑が故人のイメージを大きく傷つけることになりました(サッチャーとマイケルの出生データはhttps://www.astrodatabank.comにあります)。
フランク・クリフォード
Frank Clifford
ロンドン・スクール・オブ・アストロロジーの校長であり、著書は数十冊にも及ぶ、世界的占星家。世界的な老舗の占星術雑誌「Mountain Astrologer」に毎月寄稿。世界中のカンファレンスで講義を行っている。日本ではNHKスペシャル「占星術に魅せられて」で紹介された。日本ではARI占星学総合研究所と提携し、ロンドン・スクール・オブ・アストロロジー日本校で本格的な占星術を指導している。
ロンドン・スクール・オブ・アストロロジー日本校はこちらから
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