ハーフサムって何?
一般的な占星術では、太陽系の天体が存在する位置をそのまま使って、天体同士の角度などから人間の運命を占います。
一方、ハーフサム占星術では、天体が存在する位置ではなく、天体同士の位置の中間点(ミッド・ポイント)に強力な反応ポイントがあると考えます。
それぞれの天体が暗示する事柄が、その中間点に複合的に表現されていると考えるのです。
この考え方は古くからあったものですが、これを体系化したのがドイツのラインホルト・エバーティン氏(1901-1988)です。
エバーティン氏には代表的な著作として「天体の複合的な影響 1940」があります。
彼は、天体同士の中間点の作用を統計的に研究しました。
この体系の中でも、天体の中間点に対して、現在運行している天体が接触する時期を見る技法が最も的中率が高くなります。
【ハーフサムの歴史】
ハーフサム占星術の母胎となったものはウラニアン占星術です。
ウラニアン占星術は、20世紀初頭、ドイツのアルフレート・ヴィッテ氏(1878-1941)により作られました。
ウラニアン占星術では、天体の人間に対する影響を、より具体的に解釈しようとします。
その考え方を研究・発展させる中で、従来の占星術で使っていた天体に加えて、さらに八つの架空天体を加えたり、天体と天体との中間点に新たな反応ポイントを認めようしました。
そして、この中間点の反応ポイントが、後のハーフサム占星術の誕生に多大な影響を及ぼすことになります。
1915年、フリードリヒ・シーグリュン氏(1877-1951)がドイツのハンブルグでケプラー・サークルを創設し、そこにヴィッテ氏を講師として招聘しました。
ここからウラニアン占星術の考え方が広がっていくことになります。
このサークルを中心としたグループは「ハンブルグ学派」と呼ばれています。
このハンブルグ学派に所属していたのが、ハーフサム占星術を体系化したエバーティン氏です。
彼は、ウラニアン占星術の研究結果を踏まえながらも、八つの架空天体とハウス解釈は排除し、天体の中間点の反応ポイントに注目する技法だけを抽出して発展させました。
また、このハーフサム占星術では統計と分析といった科学的なリサーチ法を用いて、個人に対する天体の影響を研究します。
そのためか、彼自身は自分の占星術体系を、それまでの魔術的な要素が抜けきらない占星術とは違い、より科学的で近代的なものだとして、それまでにも科学的な基盤を持つ占星術に対して使われていた「宇宙生物学」という言い方を好みました。
このエバーティン氏のハーフサム占星術は、膨大にある占星術の技法の中でも、実際に存在している天体(一部架空反応ポイントはありますが)のみで構成されています。
そのことにより、シンプルではありますが、ノイズのない強力な作用のみ浮かび上がらせることに成功したのです。
シンプルで強力な作用を抽出できるハーフサム占星術は、急速な勢いで占星術の世界に浸透していきます。
特に欧米では、従来の占星術に加えてハーフサム占星術を併用する見方が普及しています。
現代の占星術の教科書には、必ずと言っていいほどハーフサム占星術が登場します。
一般に知られるようになってから60年ほどですが、その有用性ゆえに、西洋占星術には欠かせない存在になっているのです。
隈本健一
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